「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし」
これは鴨長明の随筆『方丈記』の冒頭の言葉です。私の師匠がよく法話に引用していた言葉でもあり、いつも頭の中にあります。
河の流れは時間、うたかたは人の命、時の過去から未来への永遠の流れとその中に生まれ、生き、死んでいく人の命の諸行無常を説いた教えと理解しています。
人生を河の流れに譬えるように、四季に当てることがあります。中国には四季それぞれに色をつけた「青春・朱夏・白秋・玄冬」という言葉があり、人生のそれぞれの時代をよくあらわしているように思います。
『方丈記』のよどみに浮かぶうたかたの譬えにあるうたかたは、消えて姿形は見えなくなってもそのすべてを消滅したのではなく、水中にあって水面に浮かぶ、うたかたとともにいつも同じ時を流れているのではないかということです。
今年は師匠の七回忌になります。ついこの間のことのようにも、ずいぶん前のことにも思えます。『方丈記』の言葉は師匠が私にくれた遺産のようなものです。師匠の言葉を私が受け継ぎ伝え、師匠への御恩を返してまいります。
日蓮大聖人は「孝行という親に対する恩返し、これが一番尊い行いなのですよ」と仰せです。
「孝行」は、皆さんが小さなころによく言われた言葉の一つかと思います。仏さまの道を学ぼうという志を持っているあなたであるならば、なおさらにその孝行を大事にしなければなりませんよというお言葉です。
また日蓮大聖人は「仏弟子は必ず四恩をしつて知恩報恩をほうずべし。」と仰せです。
四恩とは
1.父母がくれる恩
2.すべての生きとし生けるものがくれる恩
3.国主がくれる恩
4.仏さまの恩
のことで日蓮大聖人は、この四つの恩に報ずることを心掛けることが大切であると仰せです。
お寺参りは立派な孝行のひとつです。月に一度であってもお寺にお参りをして、亡き方々に手を合わせる尊さは、天よりも高く、大地よりも厚い、それだけ重みのあるものです。
「今日一日を無事に暮らせました。お守り下さってありがとうございます」と感謝を伝えることはとても大きな孝行となるはずです。
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