日蓮聖人のお書きになられた御書の中に報恩抄というお手紙がございます。
この書は、日蓮聖人御年五十五歳の建治二年三月十六日、お師匠様である道善房が死去された事に対して、さすがに昔を思えば切々に思慕の情堪えず、心をこめて書き上げられているのでございます。
お手紙の冒頭に、
「老狐は塚をあとにせず。白亀は毛寶が恩をほうず。畜生すらかくのごとし。いわんや人倫をや。(中略)いかにいわんや佛教をならわん者の、父母、師匠、国恩をわするべしや。」
とあります。
このお心は亡きお師匠様に、報恩のお心をあらわされたものであります。また、私達には父母に対する感謝の心を持つことの大切さをお教えになっておられます。
私達は、恩という大切な事を忘れてしまったかのような生活をすごしているのではないでしょうか。
大恩ということでは、大切な両親を自分の身勝手な行動から殺してしまうという事が日常起きております。また、小学生、中学生の子供たちがクラスの仲間と心が通じ合えないということに悲観して、自からの命を絶ってしまうという、本当に痛ましい事件が後を絶たない。このような出来事は、世の中の「ひずみ」が原因で尊い「命」の重さを軽視している。親に対する報恩感謝の心を素直な気持ちで「ありがとう」と言える子供を育てる事こそが、世の中の「ひずみ」を少しでも解消できるのでございます。
報恩抄の結びのお言葉に
「されば花は根に返り、眞味は土に留まる。此の功徳は故道善房の聖霊の御身にあつまるべし」
とおっしゃられています。
日蓮聖人がお弘めになられたお題目を、一生懸命、腹の底から、血のにじむような声をおしまず、お唱えすることこそ、お師匠様やご両親様、そして、一切の方々に対する報恩の道ではないかと思う次第でございます。
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