最近は子供がお寺に来るということが少なくなっているように思います。檀信徒の年輩の方々とお話をさせて頂くと、「わしの子供のころは、お寺で遊んでよく住職に怒られた」と笑顔でおっしゃいます。この思い出はお寺の財産だと思います。
それで私のお寺では、子供にお寺の思い出を作ってもらうために、12月に焼き芋の会として境内で焼き芋を焼き、子供に配ってお話をする機会を設けています。その時に話すのが、境内の桜の木を例に挙げ、
「君たちが今から勉強して賢くなる、スポーツをしてたくましくなるというのは、この木で言えば枝が伸び、たくさんの花が咲くのと同じ。でも大事なのはこの木の見えない地面の中には大きい枝葉よりさらに大きい『根』が何倍も広がり、その『根』が立派な枝葉を支えているんだよ。この『根』とはみんなの『心・気持ち』なんだよ。だから大いに勉強して、スポーツをして立派な大人になって欲しいから、まずみんなの根っこを大きくしよう。そのためには素直に心のこもった挨拶をしましょう」
とお話させて頂きます。
心は人とのつながりの中で育まれます。そのつながりを生むのは言葉、なかでもまず第一に「挨拶」であります。朝しっかり「おはよう」と言い、自分に施してくれる方に「ありがとう」と心を込めて言葉にすることであります。
この話はなにも子供だけに当てはまるのではなく、私たち大人にも当てはまります。何より私たち大人が実践してこれからの日本を支えてくれる次の世代を導くべきであります。
パソコンや携帯電話の普及で思いのこもった言葉や文字が少なくなりつつある昨今ですが、日蓮聖人は末法の衆生の身口意(しんくい)の三業の中でもとりわけ「意業」、つまり心の行いが大事になると仰せであります。
皆様におかれましては皆様自身のご修行、またこれから先に立つ頼もしい子供たちのために、日々の中でたくさんの心のこもった言葉をお話頂きますようお願い申し上げます。
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