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「成道会(じょうどうえ)」

記事:布教師 上嶋 智典

 成道とは菩薩が修行を完成して、仏の悟りを開くことを言います。

 釈尊の生涯における大きな出来事を八つにまとめたものを八相といいますが、成道はその中の一つであります。八相の中の降魔・成道は、釈尊が悟りを開かれた様子を今の私たちに伝えています。

 29歳で出家し、6年間の苦行に見切りをつけた釈尊は、尼連禅河の水で身を清め、村娘スジャータから乳粥の供養を受けて体力を回復させました。そして、その後、悟りの場を求めてさまよい歩き、ついに尼連禅河の畔(ほとり)にある菩提樹の下に座られました。

 釈尊にとって出家して以来、人間が老い、痛み、死ななければならないという、生きる上での根本的な苦しみをどう解決するかということが、最大の課題でありました。

 その人生苦の真理を究め、苦の起こる原因を解決するため、瞑想禅定に入られました。ところが、樹下で瞑想する釈尊に様々な悪魔が立ちはだかり、妨害したというのです。悪魔は、釈尊を悟りの座から追い払おうとして美女を遣わし、誘惑させました。また、風を巻き起こし、大雨を降らせ、熱い炭火を投げつけ、灼熱の灰を降らせ、暗闇を引き起こすなど様々な手を使って、攻撃を繰り返しました。しかし、釈尊はこれらすべてをはねのけ、退けました。

 降魔というのは、人間が本質的に抱えている欲望、嫌悪、飢渇、渇愛、怠惰、恐怖、疑惑、偽善など釈尊が出家して以来、6年余の修行・苦行中につきまとった世俗への誘惑と揺れる心の葛藤を表したものであろうといわれています。

 人生苦というものも、自分の心が作り出したものであり、誰もが避けて通れない、思うがままにならないことであると受け止めることで、苦悩から開放される、と釈尊は人生苦の真理を解明され、悟りを開かれました。

 ときに釈尊35歳、日本では12月8日であったとされ、この日には「成道会」と呼ぶ法要が営まれています。

〈除夜〉
人間には108つの煩悩があると言われます。私たちの身体や心を煩(わずら)わせ、悩ませ、かき乱し、惑わす精神作用の総称です。人は煩悩によって業(ごう)を起こし、苦しみの報いを受けて迷いの世界につなぎ止められるとされています。ですから、煩悩を断って涅槃の悟りを得るのが仏教の目的であります。

 そこで、新年を迎えるにあたって、大晦日に108つの鐘をついて煩悩をとり払い、すがすがしい心持ちでお正月を迎えたいというのは私たちの願いです。

 除夜とは除日(大晦日)の夜の事を言い、大晦日につく鐘を除夜の鐘と呼んでいます。

 新年を迎える前に、今年自分がやってきた失敗等を反省し、来年への抱負を胸にお寺へお参りし、心静かに除夜の鐘をついてみましょう。きっと清らかな心持ちで新年を迎えることができます。

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